A市からS湖方面にクルマを走らせて、市街地を過ぎたあたり、左側にポツンと1軒の修理工場が有ります。僕がクルマ関係の仕事をしていたときの顧客さんです。
道路側のシャッターがいつも降りているので、人が居るのか居ないのか、やっているのかやっていないのか判断が難しいです。バック・ヤードには、修理待ちなのか、コレクションなのか、ロータスだのアルファ・ロメオだのMGだのヨーロッパ系の古いクルマがひっそり置いてある。
ここの修理工場のオヤジさんは、僕より少し上の世代で、レストア職人独特の無愛想な人です。 営業に来た僕が話しかけても、当然、素人だと判断して、まともな返答をしてくれなかったですね。
或る日のこと、2ドアの小さなスポーツ・カーが運び込まれていた。まさかと思ったけど、恐る恐る、オヤジさんに尋ねてみた 「 これ、もしかしてエリート ? 」 めんどくさそうに 「 そうだよ 」 言う。
Lotus Elite (1960)
グラビア誌でしか見られないと思っていた、幻とも思えるクルマが目の前にある。エリートを特集したグラビア誌によると、当時、日本にも10台前後輸入されたらしい、しかし、殆どが公道、サーキットのスポーツ走行時の事故や色々な事情で廃車になり、多分、僕が思うに、ロータス社からのオリジナルの右ハンドル車は、2、3台残ってるかどうか・・・・。
もう少し、何回も読み返した当時のグラビア誌の記事を思い出しながら : 編集者の回想
[ クルマの撮影を依頼されると、クルマを眺め、そのクルマがかっこ良く写る決まりの角度 ( アングル ) をカメラマンと相談しながら決める。しかし、エリートを目の前に、あまりにも多すぎる決まりの角度にカメラマンと私は絶句した・・・・。]
FRP製ボディの緩やかな曲線を多用したボディワーク・スタイリングだけではなく
メカニズムも、コベントリー社のアルミ製クライマックス・エンジン 、SUツインキャブレター、四輪ディスクブレーキ、四輪独立サスペンション等など、日本車の水準を遥かに凌駕していて、異次元の空間から突然現れたUFOみたいな感じのクルマだったと思う。
エリートのオーナーは、どんな人だか知らないけど、このクルマをアメリカで見つけて来て個人輸入して、ここにレストアを頼んだんだってさ、僕は、用も無いのに殆ど毎日通うことになる・・・・。
暫くして、ボディは塗装のため、シャーシと切り離されて専門工場に送られ、エンジンも降ろされて、オヤジさんは、気が向いたとき、部品がイギリス(注1)から届いたとき、本格的にコツコツとレストアを始めた・・・・。この調子だと、何ヶ月かかるのだろうか・・・・?もしかして、1年以上かも・・・・?
数ヶ月後、エリートに付いての話題がそろそろ尽きて来た頃、気になってたことを尋ねた。
「 ボディの色は、何色にしたのでしょうか? やっぱりオリジナルのライト・ベージュ? 」 続けて
「 シルバー・メタリックも似合うよね?」
「 いや、黄色だったかな 」
「 はぁ・・・・ き・い・ろ・・・・」
この部分は、拘りとセンスだから、まっいいや ・・・・。
「 レストアが終わったら、ミーティングとか、イベントで走るのかな? かなり、注目されるよね 」
「 いや、ガレージに仕舞って、外には出さないって言ってたな 」
( どんなオーナーなんだよ・・・・ 見せびらかしでもいいから、クルマって走ってこそなのに・・・・。)
こう書いてみると、あれから20年近く経ってしまった・・・・らしい。
レストアが終わったエリートを見ることは無かったけど、多分、今でも、都内の何処かのお金持ちのガレージの片隅でそのエリートが泣いている・・・・かもしれない。
ここで、僕のクルマのことだけど、実は、ピラー周りがちょっとエリートに似てたりする。エリートのオーナーさん、気を悪くしないでね。
注1 : アメリカとかイギリスでは、ヒストリック・カーと言われるクルマは、オーナーズ・クラブが代行して部品の在庫管理、発注、委託生産をしている。それに、特に、イギリスは、古いクルマの税率と保険の優遇制度もある。 日本とは逆だよな・・・・。
注1 : アメリカとかイギリスでは、ヒストリック・カーと言われるクルマは、オーナーズ・クラブが代行して部品の在庫管理、発注、委託生産をしている。それに、特に、イギリスは、古いクルマの税率と保険の優遇制度もある。 日本とは逆だよな・・・・。
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